山梨県 郷土食

山梨県

甲斐路は、人々の行き交う文化の路である。県の総面積の7割以上が山また山であるから耕地は狭く、米を主食として生きることは難しかった。しかし米のない苦しみのかげりはなく、山や川の大自然の恵みに、すすんで近づき陸稲(おかぼ)をつくり、豆、そば、とうもろこしやあわ、ひえを作った。今、伝えられている郷土料理はどれもこれも祖先たちのささやきを聞くような思いがする。「ほうとう」にしても戦後の観光ブームで息を吹き返したものではなく、米の代わりに食べた平常食であり、甲斐路の味にはあたたかさが残っている。

地図

ほうとう(ほうとう)

1人当たりの栄養量 (小学校3、4年生)

エネルギー 189kcal
たんぱく質 6.5g
脂質 1.7g
カルシウム 92mg
1.2mg
ビタミンA 225μgRE
ビタミンB1 0.06mg
ビタミンB2 0.05mg
ビタミンC 11mg
食物繊維 3.5g
食塩 1.7g
マグネシウム 37mg
亜鉛 0.6mg

由来

ほうとうの原型は、平安時代に中国から伝わってきた、小麦粉でつくる「はくたく」というお菓子だと言われてい ます。そのはくたくが名前や形をかえて各地に伝わったといわれています。
山梨県の山間部では、米作りが難しかったため、養蚕(ようさん)で生計をたてている家庭が多く、蚕(かいこ)のえさとなる桑を作り、裏作で麦を栽培し、その麦を使って各家庭でめんをうち、食していたそうで す。野菜や汁を増やすことによって小麦粉の使用量を減らすことができたため、経済的であり、調理方法も簡単で大家族の食を賄(まかな)うことが出来ることからも広く普及したといわれてい ます。
一説には武田信玄(たけだしんげん)が自らの刀(宝刀)で具材を刻んだことから「ほうとう」と名付けられたとも言われており、武田信玄とともに馴れ親しまれた郷土料理で す。「おほうとう」「にこみ(にごみ)」「のしこみ(のしいれ)」などと地域によって呼び方に違いがあ ります。

材料・分量

1 だいこん(3㎜いちょう) 20g
2 にんじん(2㎜いちょう) 8g
3 じゃがいも(中くらい角切り) 20g
4 はくさい(1㎝短冊) 20g
5 かぼちゃ(大きめ角切り) 25g
6 しめじ(小房にわける) 5g
7 油揚げ(短冊) 2.5g
8 ほうとうめん 40g
9 根深ねぎ(小口切り) 8g
10 白みそ 8g
11 煮干し 2g
12 150g

下ごしらえ・作り方

下ごしらえ

  • ・煮干しと水でだしをとる。
  • ・油揚げは油ぬきをする。

作り方

  • だし汁にそれぞれの大きさに切った野菜を入れて煮る。
  • みそを入れ味をととのえる。
  • ほうとうめんを入れる (ほうとうは汁に入れるときに粉を落としていれる)。
  • 最後にねぎを入れる。

子どもたちが作るための手順

※材料を使う順番にじゅんびしておきましょう
⑪煮干し⑫水→②にんじん→①だいこん→③じゃがいも→④はくさい→⑥しめじ→⑦油揚げ→⑤かぼちゃ→⑩みそ→⑧ほうとうめん→
⑨ねぎ

給食献立例

1人当たりの栄養量 (小学校3、4年生)

エネルギー 616kcal
たんぱく質 24g
脂質 18g
カルシウム 380mg
3.2mg
ビタミンA 208μgRE
ビタミンB1 0.30mg
ビタミンB2 0.45mg
ビタミンC 40mg
食物繊維 6.0g
食塩 3.0g
マグネシウム 83mg
亜鉛 2.5mg

献立例

  • かぼちゃぼうとう
  • ・人参蒸しパン
  • ・牛乳
  • ・おでん煮
  • ・野沢菜炒め
  • ・みかん

放送資料

山梨県の山間部では米作りが難しく、絹をとる「かいこ」を育てる養蚕(ようさん)で、生計を立てていました。かいこのえさとなる桑を作り、裏作で麦の栽培をしていました。
収穫した小麦を水でといて、平たくのばして麺にし、季節の野菜を入れて味噌で煮込んだものが「ほうとう」です。昔の人の知恵が生んだ料理といえます。特に「かぼちゃぼうとう」は、「うまいもんだよ、かぼちゃのほうとう」と言われたほど、かぼちゃの甘さが生かされて、ほうとうの代表となっています。
また、この他にも「ほうとう」は、武将武田信玄が、戦で食べていた陣中食であり、自らの大切な刀で具材を刻んだことから「宝刀(ほうとう)」と名付けられたという説もあります。たくさんの冬の食材の入った「ほうとう」を、昔の生活を考えながらいただきましょう。

一口メモ

野菜たっぷりの汁の中に独特の幅広いめんをいれて、みそで味を調える。季節や地域によって入れる野菜が違う。うどんと違い、めんを打った後ねかさずに、すぐ切って生のまま煮込むので粘り気がある。煮くずれしやすいが、煮くずれてどろどろになって、みそとまじりあった味と舌触りがほうとうのおいしさである。 
「うまいもんだよ、かぼちゃのほうとう」山梨の一部の地方では、物事がうまくいった時にこの言葉が使われているそうである。