山形県 郷土食
山形県
山形県は最上(もがみ)川を中心に開かれたところです。その最上川で結ばれた県内各地を食文化の面から見てみると、北前舟(きたまえぶね)交易による京文化の名残がある庄内 (しょうない)地域、豊かな山の幸・川の幸を活かす最上地域、恵まれた自然のもと野菜や果樹が豊富な村山(むらやま)地域、上杉鷹山(うえすぎようざん)公の教えを今に伝える置賜 (おきたま)地域と、各地域の歴史、風土の違いにより特色があります。
それらの地域色は、母たちの手から手へと受け継がれ、山形ならではの奥行きの深い独自の食文化を形づくり、今なお色濃く残っています。
冷汁(ひやしる)
1人当たりの栄養量 (小学校3、4年生)
エネルギー | 71kcal |
たんぱく質 | 6.1g |
脂質 | 3.6g |
カルシウム | 73mg |
鉄 | 1.6mg |
ビタミンA | 100μgRE |
ビタミンB1 | 0.05mg |
ビタミンB2 | 0.08mg |
ビタミンC | 5mg |
食物繊維 | 2.3g |
食塩 | 0.8g |
マグネシウム | 47mg |
亜鉛 | 0.7mg |
由来
上杉謙信公(うえすぎけんしんこう)の出陣の献立のひとつであり、上杉鷹山公 (うえすぎようざんこう)が広めた料理として旧上杉藩・米沢地区を中心に行事食として伝わっているものです。野菜の切れ端を捨てるのはもったいない、あたためる手間もかけないで冷たいまま食べることができるようにした質素倹約 (しっそけんやく)・滋養(じよう)満点の料理です。
「汁」と呼んでいますが、具だくさんのおひたしで す。だしに干し貝柱を使うと、また味わいも変わり、季節を問わず、旬の野菜やさまざまな材料をたっぷり使った料理です。
現在では普段の食事でも食べられ、くきたち菜、ほうれん草、白菜、キャベツなどの季節の野菜を使える料理ですが、冬には雪菜(ゆきな)がよく使われます。雪菜は「かぶのとう」ともいい、初冬に一度掘り起こした「長岡菜」を束ねてわらで囲って積雪を待ち、雪の中で成長した茎を採ったものです。シャキッとした歯ごたえとツンとぬける辛みが魅力のこの野菜も上杉鷹山公が導入したものです。
材料・分量
1 | ほうれんそう(2~3cm 長さ) | 30g |
2 | 乾ししいたけ(せん切り) | 0.5g |
3 | 油揚げ(せん切り) | 2g |
4 | 凍り豆腐(もどしてせん切り) | 5g |
5 | 凍みこんにゃく (なければ板こんにゃく:短冊) | 5(10)g |
6 | にんじん(せん切り) | 3g |
7 | 打ち豆(大豆をつぶしたもの) | 5g |
8 | 煮干し | 1g |
9 | かつお節 | 3g |
10 | 水 | 60g |
11 | こいくちしょうゆ | 4g |
12 | さとう | 1g |
下ごしらえ・作り方
下ごしらえ
- ・乾ししいたけは洗って水でもどす。(もどした水はだし汁として使う。)
- ・凍り豆腐はもどして白いにごりがでなくなるまで洗い、手のひらでしぼる。
- ・凍みこんにゃくは水でもどして水気をしぼる。
- ・ほうれん草は色よくゆでて、水気を切る。
作り方
- 煮干し、かつお節と水でだしをとる。
- だし汁の中に、もどししいたけ、油揚げ、凍り豆腐、凍みこんにゃく、にんじん、打ち豆を入れて煮て、調味する。
- ゆでたほうれん草を器に盛り、2が冷めてからかける。
子どもたちが作るための手順
※材料を使う順番にじゅんびしておきましょう
⑧⑨⑩だし汁→②しいたけ③油揚げ④凍り豆⑤凍みこんにゃく⑥にんじん⑦打ち豆→⑪⑫→①ほうれんそう
給食献立例
1人当たりの栄養量 (小学校3、4年生)
エネルギー | 611kcal |
たんぱく質 | 25.0g |
脂質 | 18.8g |
カルシウム | 316mg |
鉄 | 2.3mg |
ビタミンA | 302μgRE |
ビタミンB1 | 0.68mg |
ビタミンB2 | 0.53mg |
ビタミンC | 21mg |
食物繊維 | 3.5g |
食塩 | 2.5g |
マグネシウム | 92mg |
亜鉛 | 3.1mg |
献立例
- ・ごはん
- ・牛乳
- ・鯉のピリカラソース
- ・冷汁
- ・なめこのみそ汁
放送資料
米沢では、お盆やお正月などお客様をもてなす時に出される料理が冷汁です。「冷汁」は野菜の捨ててしまう部分でもおいしく食べるために工夫された料理で、質素倹約を奨励した上杉鷹山(うえすぎようざん)公が広めたといわれていま
す。季節により色々な材料が使われますが、冬の米沢の特産物「雪菜」が入ることでも有名です。昔の人の知恵はすばらしいものですね。
山形県には、冷汁の他に鯉を作った料理も有名です。鯉料理は米沢の味の一つで、上杉鷹山公が動物性たんぱく質の乏しい米沢に、相馬から稚魚を取り寄せ養殖をしたのが始まりといわれています。水がきれいな川で育った米沢の鯉は、身が引き締まり、川魚特有の泥臭さが全くありません。アライ・鯉こく・唐揚げ、そして砂糖、しょうゆで煮込んだうま煮が代表的なおいしい食べ方です。
一口メモ
今から約200年前のこと、第十代上杉家のお殿様の鷹山公が貧しく病気のために困っていた米沢の人々のために米沢城のお堀で鯉の養殖を始めた。その後、各家の庭に池を造り、鯉を飼うことを奨励したのが始まり。とくに飢饉のときなど、乳が出ない母親のために、その栄養源とする目的があったともいわれている。その鯉は米沢のきれいな水と厳しい寒さによっておいしくなり、今では米沢の名産品になっている。
参考資料
- ・「やまがた郷土料理探訪」 山形グリーン・ツーリズム推進協議会 株式会社大風印刷、平成11年
- ・日本の食生活全集6 聞き書山形の食事」 「日本の食生活全集山形」編集委員会 社団法人農山漁村文化協会、1988年
山形県